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ストレスチェック制度とは?導入された背景や目的、実施時の流れを解説

企業が順調に経営を続けていくためには、実際に業務を担う労働者の健康が欠かせません。その重要性に注目した政府によって導入されたのが「ストレスチェック制度」であり、企業が健全な経営を目指すためにもこの制度を正しく理解しておくことが大切です。今回は、ストレスチェック制度の概要や成立の背景、実施時の流れや注意点など気になる点について詳しく解説していきます。


1.そもそもストレスチェックとは


ストレスチェック制度とは、労働者が普段の業務の中で感じているストレスの大きさを客観的に調査し、必要に応じた措置を行うためのものです。ストレス社会と呼ばれる現代では、労働者が大きなストレスを抱えながら働き続けているケースも珍しくありません。ストレスが限界を超えるとうつ病などを発症し、休職したり退職したりしてしまうこともあります。収入を失う労働者にとっても、人材を失う企業にとっても、これは憂慮すべき問題です。そこで政府が考えたのが、ストレスに関する選択制の質問票を用意し、各労働者に回答してもらって分析することで、本人が仕事上どの程度のストレスを感じているか把握する「ストレスチェック制度」でした。


ストレスチェックによって労働者のメンタルヘルスの問題が把握できれば、彼らが休職・退職する前に効果的な対策をとることができます。このため、2015年以降は常時50人以上の労働者が勤務する事業所に対し、毎年ストレスチェックの実施を義務化するよう労働安全法が改正されました。該当する各事業所は1年に1回、すべての労働者に対してストレスチェックを行わなければなりません。ただし、契約期間が1年未満の労働者や、労働時間が通常の労働者の所定労働時間の4分の3未満の短時間労働者は義務の対象外です。労働者が50人未満の事業所はストレスチェックの実施が義務化されていませんが、実施する場合は法令や指針に従う必要があるので注意しましょう。


2.ストレスチェック制度が義務化された背景

ストレスに落ち込む男性



ストレスチェック制度が義務化された背景には、精神障害による労災補償の請求件数の増加が影響しています。厚生労働省が公表した平成28年度の「過労死等の労災補償状況」によると、精神障害による労災補償の請求件数は平成24年度の1257件から1586件まで増加していました。そのうち、実際に労災の支給が決定したのは498件で、過去最高の件数となっています。この件数を見るだけでも、いかに精神障害を抱えながら働く労働者が多いかがわかるでしょう。また、同じく厚生労働省が公表した「平成28年中における自殺の内訳」においては、被雇用者の自殺者数が6324人にも上っています。そのすべてが精神障害によるものとは限りませんが、まったく無関係とも言い切れません。


これらの調査結果を受けて、政府は労働者のメンタルヘルスの問題を改めて重視するようになりました。各企業は早急に労働者のメンタルヘルスの問題に取り組むべきだと判断し、具体的な方法としてストレスチェック制度が発足したのです。



3.ストレスチェック制度導入で得られるメリット


常時勤務する労働者数が50人未満の企業はストレスチェックの実施が義務化されていませんが、自主的に制度を導入することでさまざまなメリットが得られます。たとえば、各労働者はストレスチェックの結果により、セルフケアに取り組めます。セルフケアでは対処できない場合、産業医の面接指導などを受けることも可能です。自分では気づかないうちにストレスをため込んでいるケースもあるので、客観的にストレスの大きさを把握し、早めに対処できるのは労働者にとって大きなメリットです。


企業側は、労働者のメンタルヘルスの問題が表面化する前にリスクを把握し、職場環境の改善を具体的に検討することができます。職場環境を改善すれば労働者のストレスが軽減し、モチベーションや生産性が向上するなどのメリットも期待できるでしょう。


4.ストレスチェック制度実施の流れ


実際にストレスチェックを行う場合、政府が定めた指針や法令などに従って導入・運用をしなければなりません。企業が自主的に定めた方法で実施しても、ストレスチェックを行ったとは認められない可能性もあるので注意が必要です。次は、厚生労働省が公表する導入マニュアルを参考に、ストレスチェックを実施する際の流れを具体的に見ていきましょう。


4-1.導入前の準備


ストレスチェック制度を導入するには、まず準備段階として事業所の衛生委員会等で話し合い、いつ・誰が・どのようにチェックを実施するのかといった内容を決めなければなりません。ここで決定した内容を社内規定として明文化し、すべての労働者に対して公表する必要もあります。また、制度全体を管理する責任者や担当部署、ストレスチェックの実施者・実施事務従事者などの役割分担を決めて実施体制を整えておきましょう。なお、ストレスチェックの実施者は医師や保健師のほか、所定の研修を受けた看護師、精神保健福祉士のいずれかとなります。社内の一般的な労働者が実施することはできないので、注意が必要です。


4-2.ストレスチェック実施


いざストレスチェックを実施することになったら、まずは質問票を各労働者に配布して回答してもらいます。質問票の様式には特に指定はありませんが、「ストレスの原因」「ストレスによる心身の自覚症状」「労働者に対する周囲のサポート」の3点に関する質問が含まれていなければなりません。どのような質問票を作成すべきか迷った場合は、厚生労働省のストレスチェック制度導入マニュアルを確認すると良いでしょう。国が推奨する質問項目が記載されているので、参考にすると便利です。


労働者の回答が終わったら、実施事務従事者が質問票を回収し、医師などの実施者が面接指導の必要な高ストレス者をピックアップします。ストレスチェックの結果は実施者または実施事務従事者から直接本人に知らされるため、基本的に企業は知ることができません。企業が結果を知るためには本人の同意が必要であり、たとえ経営者や直属の上司といえども勝手に閲覧するのは厳禁です。


4-3.面接指導と就業上の措置


ストレスチェックの結果、高ストレス者と判定された従業員から面談の申し出があった場合は、実際に面接指導を行います。申し出はストレスチェックの結果が知らされてから1カ月以内、面接指導は申し出があってから1カ月以内にそれぞれ行わなければなりません。面接指導が終わったら担当した医師から意見を聞き、労働時間の短縮など必要とされる就業上の措置について検討しましょう。医師からの意見聴取も、面接指導が終わった後1カ月以内に行う必要があります。なお、面接指導の結果は事業所で5年間保存しますが、医師からの報告書などに所定の項目が含まれていれば、わざわざ新たに記録を作成せず報告書をそのまま保管しておいても構いません。


4-4.職場の分析と環境の改善


ストレスチェックは、実施さえすれば問題が解決するわけではありません。チェックの結果、高ストレス者が多く存在していた場合、労働環境に何らかの問題がある可能性もあります。そのまま放置していれば労働者のストレスは増大し、多くの人が心身の調子を崩して休職・退職してしまうかもしれません。このような事態を防ぐためにも、あくまでも努力義務ではありますが、ストレスチェック実施後は分析結果をもとに職場環境の改善に努めるようにしましょう。


ストレスチェックの結果は、実施者または実施事務従事者が部署など集団単位で集計・分析して企業に提供します。ただし、集団が10人以下の場合は個人が容易に特定できる恐れがあるため、全員の同意がなければ情報提供を受けてはいけません。分析結果を得た後、企業は産業医などの協力を仰ぎつつ、職場環境をどう変えていけば労働者のストレスを軽減できるのか検討することが大切です。


5.ストレスチェック実施時の注意点


ストレスチェックでは、労働者のメンタルヘルスというデリケートな問題に接するため、情報の取り扱いには十分な配慮が求められます。次は、ストレスチェックを実施する際に注意すべき点について見ていきましょう。


5-1.不利益取り扱いの防止


企業は、ストレスチェックによって得られた情報により、労働者が不利益をこうむるような事態を防がなければなりません。たとえば、医師による面接指導を受けたいと申し出た、ストレスチェックを受けなかったなどの理由で、労働者に不利益な取り扱いを行うのはやめましょう。このほか、ストレスチェックの結果を企業へ提供することに同意しなかった、医師による面接指導を受けなかったなどの理由も同様です。さらに、面接指導の結果が思わしくなかったからといって解雇したり、退職を勧めたりすることも法律で禁止されています。もし違反した場合、企業に罰則が科せられる可能性もあるので注意しましょう。


5-2.プライバシーの保護


労働者にとって、自身のメンタルヘルスに関する情報はプライバシーに大きく関わるものであり、あまり周囲に知られたくないこともあります。このため、ストレスチェックを実施する場合、企業は労働者のプライバシーをきちんと保護しなければなりません。ストレスチェックに関する情報を不正に入手することは禁じられていますし、ストレスチェックの実施者と実施事務従事者には法律によって守秘義務も課せられています。また、企業に提供されたストレスチェック結果などの個人情報は適切に管理し、情報を共有する場合も必要最小限の範囲にとどめるなどの配慮が必要です。


まとめ


ストレスチェック制度は、単に労働者のメンタルヘルスの問題を把握できるだけではありません。導入することで職場環境の改善を図り、労働者のストレスを軽減して生産性の向上が期待できるなど、企業側にとってのメリットも大きいです。



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