【産業医寄稿】あなたはセルフケア出来ていますか?!

 平成18年3月に厚生労働省が、「労働者の心の健康 の保持増進のための指針」(以下、メンタルヘルス指針)を定めました。この中には、働く人の精神的な健康の保持増進のために、4つのケアを上手く機能することが大切であることが述べられています。

4つのケアとは、具体的には、「セルフケア」・「ラインケア」・「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」・「事業場外資源によるケア」になります。これだけストレスが過多になった時代なので、誰もがメンタルヘルス不調になる可能性があります。だからこそ、誰もがその予防方法を知って、実践する必要があります。

そこで、自分自身でできるメンタルのケアとして、セルフケアが該当します。ただ、このセルフケアについて、聞いたことがある人がいても、自信を持って「セルフケア出来ています!」と言える人は少ないのではないでしょうか。

1、ストレスとは一体なに?

まず、多くの人が、ストレスを勘違いしています。ストレスと聞くと、ネガティブな印象を持つ人がほとんどでしょう。しかし、ストレスとはもっと広い意味で扱われるのです。

心理学では、自分にとって嬉しいことでも、悲しいことでも、心や体の外部からやってくる刺激のことをストレッサーといいます。この刺激に対して、心や体が反応することをストレス反応といいます。

つまり、ストレスは自分にとってネガティブなものだけではなく、ポジティブなものに対しても当てはまるのです。

ストレスはどんどん蓄積することで、メンタルヘルス不調につながる可能性が一気に大きくなります。だからこそ、早い段階で、自分自身にストレスが溜まっていることに気づくことが、メンタルヘルス不調の予防になります。

2、現代社会は、ストレスが溜まりやすい

たしかに、ストレス耐性は個々によって違ってきますが、現代社会は、働く環境がストレスを感じやすい環境になっています。具体的には、高度な情報化やグローバル化などが挙げられます。

高度な情報化によって、職場以外でも仕事に関する情報をキャッチできるようになりました。またグローバル化が進むことで、日本が深夜であっても、海外とやり取りする機会が増えたりしています。その結果、心も体も、仕事から切り離しにくくなったのです。

3、セルフケアで行う3つのチェック

現代社会が、これだけストレスフルなことはよく分かってもらえたと思います。だからこそ、セルフケアが大切です。セルフケアは、日常生活における次の3つの行動に注目して下さい。この3つの行動が、普段と比較してどこか違うというズレを感じた時には要注意です。そして、それを“気付づき”に変えて欲しいと思います。


A:食べる

「食欲が減ってきた」・「好みの味が変わってきた」・「空腹がこない」など


B:寝る

「寝つきが悪くなってきた」・「途中で何回も目が覚める」・「よく寝た感じがしない」など


C:遊ぶ

「趣味が楽しめない」・「満足感がない」・「何をしてもつまらない」など


これらは、体からのSOSであり、この変化をキャッチすることが、セルフケアの入り口です。この変化を無視して無理をしてはいけません。

4、体からのSOSに気づいた後に行うこと

SOSを感じた時は、まずは休息が必要になります。何よりも心も体も休ませることが大切です。先ほどお話したように、現代社会の職場はストレスがたくさんあるので、少しでもストレッサーから離れることが必要です。

 仕事のメリハリを意識して、休日は一切仕事に触れないなど、自分の中でルールを作って過ごすように工夫して下さい。普段、オフィスで仕事をしている人ならば、体を動かすこともお勧めします。球技などの本格的なスポーツでもいいですし、手軽にウォーキングなどでも構いません。体を動かすことはリフレッシュにつながりますし、体を動かすことに集中するので、心も仕事のことから離れることが出来ます。

他にも、友人などと話すこともリフレッシュになります。話の内容は、自分の趣味の話でも、仕事の悩みや不安などでも構いません。「相談しても妙案や解決策なんては出てこない…」と思う人もいるかもしれません。

しかし、だれかに話を聞いてもらうだけでも不安は軽減する効果があるので、ストレスを感じた時はぜひ相談してみましょう。もちろん、友人ではなく産業医や保健師などの専門家に相談しても構いません。

5、最後に

メンタルヘルス不調は誰もがなりえます。心が強いとか弱いとかは関係ありません。だからこそ予防が大切であり、正しいセルフケアを行って、自分のストレスのたまり具合に気づき、上手く解消できるようにしていきましょう。

井上 智介
井上 智介

島根大学医学部を卒業後、様々な病院で内科・外科・救急・皮膚科など、多岐の分野にわたるプライマリケアを学び2年間の臨床研修を修了する。その後は、精神科医、産業医の役割を中心に活動し、産業医経験は5年以上になる。 産業医としては、毎月複数の企業を訪問し、精神科医や健診医の経験も活かしながら企業の安全衛生の保守や社員の健康障害の防止の活動している。 さらに、全ての国民に医療情報の正しい理解を目標にして、個人ブログやSNSを活用するだけでなく、コラムを担当したり、全国で講演したり、精力的に医療情報の発信を続けている。 保有資格:精神保健指定医、認知症サポート医、日本医師会認定健康スポーツ医、日本医師会認定産業医、温泉療法医 ブログURL https://ameblo.jp/tatakau-sangyoi/

人気記事

1

嘱託産業医への報酬はどれくらい?相場や決まりなど。

「産業医の採用コストっていくらが適正なの?」と不安に思う方は多いのではないでしょうか。 すでに産業医がいる企業でも、雇用形態を変えることでコストを抑えることもできるかもしれません。 本記事では、産業医の報酬相場や決まりなどをご紹介します。

2

産業医との契約形態にはどのようなものがあるか

産業医との契約にはいろいろなケースがあるのをご存じでしょうか? 大きく分けると、産業医と企業が直接契約するケースと、間に企業をはさんで間接契約するケースの2つの方法があります。 本記事では、多くの企業が採用する直接契約について解説します。

3

産業医 尾林誉史先生×企業の語り場 vol.1

企業の産業保健活動を推進するために、企業と産業医の間ではどのような連携が必要なのでしょうか。 今回は、カヤックの労務担当・植杉佳奈恵氏、カヤックの産業医を務める尾林誉史先生に、対談形式で実際に行っている産業保健の取り組みについて伺いました。

4

今、働き方改革で注目したいのは”働き方”に直結する社員の“食環境”

働き方改革の流れの中で、いま改めて考えたい社員の“食環境”。取り組みをされている企業はまだ少ないのではないでしょうか? 今回は「食から始める働き方改革」というテーマで、人気栄養士 笠井奈津子氏にお話を伺いました。

5

プレゼンティズム、アブセンティズムから考える健康経営

人事労務の仕事を通して、「プレゼンティズム」「アブセンティズム」というキーワードに触れる機会は増えていませんか。それは、これらのワードが従業員の健康に対する投資対効果(ROI)を測るための指標として注目を集めているからです。 本記事では「プレゼンティズム」「アブセンティズム」という言葉の意味をはじめ、改善に取り組むメリットをご紹介します。もしこの2つを理解し、従業員のアクションまで落とし込めれば、自社の生産性向上や経営陣への健康経営に向けたアピールにもきっと役立てられるはずです。

関連記事

【産業医寄稿】ラインケアはどのように行えばいいの?

産業医コラム

厚生労働省が発表している平成30年度の労働安全衛生調査(実態調査)の調べによると、現在の仕事や職業生活に関することで、強いストレスとなっていると感じる事柄がある労働者の割合が、58.0%でした。さらに、精神障害による労災認定件数も、右肩上がりに増え続けている状況です。  「自分の周りは、メンタルヘルス不調と関係のない話だ」と思っていても、いつ、だれがメンタルヘルス不調になるかは、分からない状況であることは分かって下さい。そのために、常に予防する意識は持っておく必要があります。  平成18年3月に厚生労働省は、労働者の心の健康の保持増進のための指針において、4つのケアを上手く機能することが大切であると示しました。4つのケアとは、具体的には、「セルフケア」「ラインケア」「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」「事業場外資源によるケア」になります。その中でも、今回は、管理監督者が行うラインケアについてみていきましょう。

ウェルビーイングの意味とは?ウェルビーイング経営の意義と実践法

健康経営とは

ウェルビーイングの意味とは「自身も周囲の環境も『良好な状態』にある」という概念のことです。近年、健康経営が意識される中でウェルビーイングをキーワードにした企業が増えてきたように感じます。ここでは、ウェルビーイング経営について紹介していきます。

健康経営に欠かせない衛生管理者とは?選任義務と必要な資格について解説

産業医選任以外の義務

従業員の健康に配慮した健康経営をするうえで、衛生管理者は必要不可欠です。特に、条件を満たす事業所であれば、衛生管理者を配置することが義務付けられています。しかし、そもそも衛生管理者とはどのような役割で、配置することでどのような効果があるのか理解しているでしょうか。ここでは、衛生管理者を配置する際に最低限覚えておきたいポイントについて詳しく紹介します。

低気圧で体調不良になりがちな梅雨 職場環境を改善して労働効率アップ

従業員の病気

暑かったり寒かったり、あるいはジメジメした天候が続く梅雨時は体調を崩しやすいものです。 イライラしたりやる気が出なかったりして仕事の能率も下がりがち。 こうした症状を指す「気象病」という言葉も定着してきました。 その原因の多くは自律神経の乱れにあります。 規則正しい生活やバランスのとれた食事、適度な運動を心がけることが大切ですが、職場環境を見直すだけで症状を和らげることも可能です。 ポイントは温度と湿度のコントロール。 職場の温度と湿度に目配りして、生産性アップにつなげましょう。

今、働き方改革で注目したいのは”働き方”に直結する社員の“食環境”【連載vol.1】

生産性向上

働き方改革の流れの中で、いま改めて考えたい社員の“食環境”。取り組みをされている企業はまだ少ないのではないでしょうか? 今回は「食から始める働き方改革」というテーマで、人気栄養士 笠井奈津子氏にお話を伺いました。

お問い合わせ

産業医の採用ついて、健康経営の取り組みについて、お困りではありませんか?
お見積り、ご相談は完全無料ですので、お気軽にお問い合わせください