健康経営に欠かせない衛生管理者とは?選任義務と必要な資格について解説

従業員の健康に配慮した健康経営をするうえで、衛生管理者は必要不可欠です。特に、条件を満たす事業所であれば、衛生管理者を配置することが義務付けられています。しかし、そもそも衛生管理者とはどのような役割で、配置することでどのような効果があるのか理解しているでしょうか。ここでは、衛生管理者を配置する際に最低限覚えておきたいポイントについて詳しく紹介します。

衛生管理者とは?

衛生管理者とは、労働環境の衛生的な改善と疾病の予防処置などを行い、職場の安全や衛生を管理する人のことをいいます。従業員の職場でのストレスや体調不良の原因などに理解を示し、職場で改善を行う必要があれば指導することが可能です。あまり目立つとはいえない仕事ですが、よりよい職場環境を整えるためには欠かせない存在といえます。また、衛生管理者は国家資格でもあり、年々取得する人が増加していることからもその重要性が感じられるでしょう。

衛生管理者の具体的な業務内容

衛生管理者の業務内容は、大きく2つに分けることができます。まず、1つ目は従業員の健康管理です。職場が原因の身体的な不調はもちろんのこと、最近では精神的な不調を抱える従業員も増えています。そのため、衛生管理者はそうした不調を敏感に察知する必要があります。以前は、従業員の不調といえばほとんどが化学物質・有害物質に関連するものでした。しかし、職場環境は時代とともに変化してきており、長時間のパソコン使用による身体の疲れや人間関係による精神的な不調が増加しています。特に、精神的な不調をそのままにしておくことで精神病などにつながる可能性もあります。健康診断を行ったり産業医とのパイプ役になったりして、不調を抱える従業員を早期に発見しケアをしていくのは、衛生管理者の大切な仕事です。

2つ目は、職場の安全管理です。これは、火災が起きた際に必要となるものの点検や、従業員の健康に害を及ぼすものの排除などを行います。特に、もしものときにきちんと避難経路が機能するよう点検をしておくことはとても大切です。それから、同じビルにいくつかのテナントが入っているようなケースもあるでしょう。そのような場合には、統括安全衛生管理者の指示のもと、分担してビルの安全管理に努めることもあります。従業員の安全を守るのも、衛生管理者の忘れてはならない役割なのです。

衛生管理者の選任義務

衛生管理者は、会社の規模によって「必ず選任しなければならない」という義務があります。具体的には、従業員を50人以上使用する事業所には衛生管理者の選任義務があると考えてください。ただし、選任する人数は従業員の数によって変わってきます。たとえば、従業員が50人以上200人以内であれば1名ですが、201人以上500人以内ならば2名の衛生管理者が必要です。もし、適切な選任をしていない場合には罰則があるので注意しましょう。また、衛生管理者は選出すべき理由が発生してから14日以内に選任しなければなりません。衛生管理者は、ただ選任するだけではなく所轄労働基準監督署長に届出する必要があるため、しっかりと覚えておきましょう。

衛生管理者に必要な資格

衛生管理者は会社にとって欠かせない存在ですが、誰でもなれるわけではなく、国家資格が必要となります。ここで注意するポイントとしては、衛生管理者には第一種と第二種の2種類があることです。第一種では、より労働災害の起こる危険性の高い業種で必要となります。具体的には、ガスや水道・電気・製造加工・鉱業建設などの業種では第一種の資格が必要です。第二種ではそれ以外の業種で必要とされていますが、第一種を取得していれば、第二種の業種において衛生管理者の仕事をすることができます。企業側としては、衛生管理者の資格を保有する人を採用するケースと、すでに働いている従業員に資格を取らせるケースがあります。

衛生管理者の合格率は国家資格の中では比較的高いものの、しっかりと勉強しなければ合格することは難しい内容です。働きながら試験を受けるのは非常に大変で、通勤時間や昼休みはもちろん、休日などにも時間を費やす必要があるでしょう。試験についても、ほぼ毎月実施されてはいるものの試験会場は限られています。実施もほとんどが平日であり、数少ない休日の日程は希望者が殺到するのが実情です。それから、試験を受けるための書類には会社が記入をしなければならないものもあります。もし、働いている従業員に資格を取らせるのであれば、こうした実情についても理解し、配慮するようにしましょう。



衛生管理者を配置するメリット

衛生管理者は一定規模の会社では義務となっていますが、設置することによる企業の利点がいくつかあります。そこで、ここでは衛生管理者を配置するメリットを紹介します。

業務のパフォーマンス向上に役立つ

衛生管理者を配置することで、業務のパフォーマンス向上に役立ちます。というのも、衛生管理者を正しく配置することにより、従業員の健康管理がしっかりとできるからです。それぞれが能力を最大限に発揮するので、結果的に業務のパフォーマンス向上につながります。また、衛生管理者は重大な病気につながる予兆を早期発見したり、従業員の相談窓口にもなったりします。こうした役割を担う人材を配置することで、病気の一次予防が可能となるのです。

万が一のリスクに備えられる

衛生管理者の設置は、万が一のリスクに備えるのにも有効となります。衛生管理者は、小さな問題が大きなトラブルにつながらないために、早期発見の役割を担う存在です。会社や従業員にとって大きな打撃となるリスクに備えるためにも、衛生管理者が適切に業務を遂行することは非常に大切となります。

健康経営に効果的

衛生管理者の存在は、健康経営にも効果的です。そもそも、健康経営とは、従業員の健康に配慮し会社全体で健全な経営を行っていくことをいいます。従業員の不調やその原因となっている職場環境を管理する立場である衛生管理者は、これからの時代において、その役割がさらに重要視されていくでしょう。

衛生管理者の配置以外に気を付けたいこと

健康経営に衛生管理者の存在は欠かせないものですが、それ以外にも注意するべきポイントがあります。ここでは、衛生管理者以外にも必要なことについて紹介します。

産業医の配置

健康経営のためには、産業医を配置することも重要なポイントです。そもそも、産業医は衛生管理者と同じように、会社の規模によって配置することが義務付けられています。従業員数が50人以上の事業所に1人の配置が義務となっており(事業者から産業医に所定の情報が毎月提供される場合には2ヵ月1回でも可)、職場環境の巡視などを行います。産業医には月に1回の巡視が必要とされており、衛生環境はもちろん、職場の温度や照度などについてもチェックをします。また、衛生管理者と一緒に衛生委員会に参加することもあります。従業員数が50人以上の会社では衛生委員会の設置も義務であり、産業医はその構成員です。産業医は衛生委員会への出席が望ましいとされているため、できるかぎり参加するのが一般的となっています。

その他にも、産業医は医師ならではのさまざまな医学的指導を行うのが特徴です。健康診断の結果から、場合によっては就労制限の判断・意見書を作成したり、従業員の健康相談に乗って指導をしたりします。それから、健康についての研修を行うのも産業医の役割です。健康・衛生管理が目的の研修は衛生講話とも呼ばれ、企業にとっても安全管理などに役立ちます。医師としての専門的な指導ができる産業医は、企業の健康経営には欠かせない立ち位置です。

ストレスチェックの導入

ストレスチェックの導入も、健康経営には必要不可欠です。ストレスチェックも会社に課されている義務であり、従業員が50人以上の事業所は労働基準監督署へ報告をしなければなりません。労働者の精神的な健康維持には欠かせない制度で、適切に実施することが求められています。実施義務のある会社では、年に1回ストレスチェックを行わなければいけません。従業員50人未満の会社では、ストレスチェックの報告は義務ではありませんが、可能なかぎり実施することが望ましいとされています。

ストレスチェックをすることによって、従業員のメンタルヘルス不調を防いだり、職場環境を改善したりすることが可能です。そのため、ストレスチェックを導入することは会社にとってもメリットが大きいでしょう。しかし、ストレスチェックを導入するには、制度や方針などさまざまな面での検討が必要です。もし、社内で導入するのが難しいのであれば、外部機関に依頼するという方法もあります。外部に委託することで、全てを自分たちで行うより簡単にストレスチェックの実施が可能になります。

衛生管理者を選任し、健康経営をしよう!

健康経営には、従業員の健康維持のための配慮が欠かせません。そのために重要な役割を果たしてくれるのが、衛生管理者です。衛生管理者を設置することで、リスクを回避することができ、会社全体のパフォーマンス向上にもつながります。衛生管理者の存在は、会社にとってもメリットの大きいものなのです。衛生管理者の選任を適切に行うことで、健康経営に役立てましょう。

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