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安全衛生委員会は誰が何をする?労働災害防止のために果たすべき役割と目的とは

労働環境に関するさまざまな審議を行う場である、「安全委員会」と「衛生委員会」。
両者を統合した「安全衛生委員会」として設置されることも多く、いずれも従業員の健康管理に重要な役割を果たしています。


一定の基準に該当する事業場では委員会の設置は労働安全衛生法で義務化されており、違反すれば罰則を科される可能性もあるため注意しなければなりません。


基準と照らし合わせて、自分の会社は罰則にあたるのか?どのような対応が必要なのか?気になる部分多々あるのではないでしょうか。


今回は、安全衛生委員会の目的や設置基準などの基礎知識を踏まえ、審議内容や年間スケジュールの組み方など、幅広い情報を紹介していきます。


目次[非表示]

  1. 1.安全衛生委員会とは
  2. 2.安全衛生委員会を行う目的と機能とは
  3. 3.安全委員会と衛生委員会の違いは何か?
    1. 3.1.安全委員会と衛生委員会の設置基準
    2. 3.2.安全衛生委員会の構成メンバー
    3. 3.3.安全衛生委員会の審議事項は
  4. 4.もし安全衛生委員会の設置をしない場合、罰則はあるのか?
  5. 5.安全衛生委員会の年間スケジュール・テーマ
  6. 6.安全衛生委員会のマンネリ化を防ぐには
  7. 7.安全衛生委員会の議事は労働者に周知して職場環境の改善に役立てよう



安全衛生委員会とは


労働安全衛生法では、一定の基準を満たす事業場に対して「安全委員会」や「衛生委員会」、または両者の機能を統合した「安全衛生委員会」の設置を義務付けています。


安全委員会は、危険度が高いなど特定の業種に設置が義務化されたもので、危険防止や労働災害対策、安全管理に重点が置かれています。


一方の衛生委員会はすべての業種が対象で、従業員の健康障害の防止や健康の保持増進のために設置されるのが特徴です。
危険度の高い特定の業種は、衛生委員会に加えて安全委員会も設置しなければなりません。


この場合、2つの委員会に代え、安全衛生委員会を設置することも認められています。


いずれの委員会も、従業員が職場で安全・健康に働けるよう、さまざまな審議を行うために設置される点は同じです。
委員会は毎月1回以上の開催が必要で、審議内容は従業員へしっかり周知しなければなりません。


さらに、審議内容のうち重要なものについては記録を作成し、3年間保管することも義務とされているので注意しましょう。



安全衛生委員会を行う目的と機能とは


政府主導で働き方改革が進められる昨今では、従業員の健康管理も重要な経営課題のひとつになっています。


健康を損なう従業員が増加すれば、モチベーションや生産性の低下、企業イメージの悪化、集中力の欠如などによる労働災害の発生など、さまざまなリスクが高まってしまうでしょう。


このような事態を避けるには、企業側が積極的に従業員の健康管理に取り組み、高いパフォーマンスを発揮できる環境を整えてあげることが大切です。


ただし、いくら企業側がよかれと思って実施した取り組みでも、実際に従業員のためにならなければ意味がありません。
効果的な健康管理を目指すなら、現場で働く従業員の要望や、実際の労働環境の問題点などに即した取り組みが必要不可欠なのです。


そこで設置が義務付けられるようになったのが「安全委員会」「衛生委員会」および両委員会を統合した形である「安全衛生委員会」でした。


これらの委員会は、従業員の健康や安全を守るために必要な対策について、労使が一体となって調査や審議を行うことを主な目的としています。


これにより、企業側の意識を高めるとともに、健康管理上の問題点や必要な対策について、労使で認識をすり合わせることもできます。


従業員の危険や健康障害を防ぐための効果的な取り組みを企画・実施するためにも、各委員会の設置は欠かせないものなのです。



安全委員会と衛生委員会の違いは何か?


安全委員会と衛生委員会は、ともに労働災害防止のために設置される点は同じですが、設置基準や委員会の構成メンバー、調査審議事項などが異なります。どのような違いがあるのか、それぞれ詳しく見ていきましょう。


安全委員会と衛生委員会の設置基準


安全委員会と衛生委員会は、設置基準に以下のような明確な違いがあります。
業種や従業員数に応じて安全委員会の設置義務の有無が変わるので、自社がどこに該当するか確認しておきましょう。



設置が必要な事業場

業種
安全委員会

①常時使用する労働者が

50人以上の事業場で

右の業種に該当する場合

林業、鉱業、建設業、製造業の一部の業種(木材・木製品製造業、化学工業、鉄鋼業、金属製品製造業、輸送用機械器具製造業)、運送業の一部の業種(道路貨物運送業、港湾運送業)、自動車整備業、機械修理業、清掃業

②常時使用する労働者が

50人以上の事業場で

右の業種に該当する場合

製造業のうち①以外の業種、運送業のうち①以外の業種、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業・小売業、家具・建具・じゅう器等卸売業・小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業

衛生委員会
常時使用する労働者が
50人以上の事業場
全業種


衛生委員会は、従業員数が50人以上になった全ての業種が設置するため、安全委員会の設置基準を満たす業種は2つの委員会を設置しなければなりません。


しかし、2つの委員会を別個に設置するのは非効率的であるため、この場合は両者を統合して「安全衛生委員会」を設置することも認められています。


安全衛生委員会の構成メンバー

安全委員会・衛生委員会の構成メンバーは、誰でもよいわけではありません。
労働安全衛生法により、委員会ごとに以下のような構成メンバーが定められているので注意しましょう。


安全委員会
衛生委員会
  1. 総括安全衛生管理者又は事業の実施を統括管理する者等(1名)
  2. 安全管理者
  3. 労働者(安全に関する経験を有する者)
  1. 総括安全衛生管理者又は事業の実施を統括管理する者等(1名)
  2. 衛生管理者
  3. 産業医
  4. 労働者(安全に関する経験を有する者)


このうち、「①総括安全衛生管理者又は事業の実施を統括管理する者等」以外のメンバーは企業側が指名することになっています。


ただし、自由に選べるわけではなく、従業員の過半数で組織する労働組合がある場合は、構成メンバーの半数を労働組合からの推薦に基づいて指名しなければなりません。労働組合がない場合は、従業員の過半数を代表する者の推薦に基づきます。


たとえば、衛生委員会の場合、②・③の2名を企業が指名した場合、④は労働組合が推薦した3名を指名しなければなりません。①の議長を含めると6名となり、6名中半数の3名を労働組合の推薦から指名したことになるので、構成メンバーの条件を満たします。


なお、①は議長となるので基本的に1名ですが、それ以外のメンバーについて、人数の上限はありません。
それぞれ最低1名以上指名すればよいので、企業の規模や適切な担当者の有無などに応じて適切な人数を考えましょう。


安全衛生委員会の審議事項は

安全委員会および衛生委員会では、従業員の健康障害や危険を防止するため、関連するさまざまな事項について調査審議を行います。


ただし、どのような内容でも自由に取り扱えるわけではありません。
労働安全衛生規則により以下のような審議事項が定められており、これに準じた内容を話し合う必要があります。


安全委員会
衛生委員会
  1. 安全に関する規程の作成に関すること
  2. 危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置のうち、安全に係るものに関すること
  3. 安全に関する計画の作成、実施、評価及び改善に関すること
  4. 安全教育の実施計画の作成に関すること
  1. 衛生に関する規程の作成に関すること
  2. 衛生に関する計画の作成、実施、評価及び改善に関すること
  3. 衛生教育の実施計画の作成に関すること
  4. 定期健康診断等の結果に対する対策の樹立に関すること
  5. 長時間にわたる労働による労働者の健康障害の防止を図るための対策の樹立に関すること
  6. 労働者の精神的健康の保持増進を図るための対策の樹立に関すること


具体的に言うと、長時間労働の有無や対応、健康診断実施状況や結果報告、職場における危険箇所や問題点、労働災害事例などが話し合われます。このほか、産業医からの衛生講話や、前回の審議で取り上げた問題点などの改善報告など、内容は実に様々です。


また、衛生委員会では、重要な役割のひとつである「ストレスチェック」に関する調査審議も行われます。


ストレスチェックを実施する際の目的や体制を明確にしたり、実施方法の検討や情報の取扱規程を策定したりするなど、実施に関するさまざまな項目を細かく審議調査しなければなりません。


従業員や産業医の窓口となってやり取りするケースも多いので、衛生委員会の構成メンバーは特に慎重に選ぶとよいでしょう。
従業員からの信頼が厚く、職場の実情などをよく理解している従業員に任せるのがおすすめです。



もし安全衛生委員会の設置をしない場合、罰則はあるのか?


安全委員会と衛生委員会は、労働安全衛生法により設置が義務付けられたものです。


基準を満たしているにもかかわらず設置しなかった場合は、50万円以下の罰金が科される可能性があるので注意しましょう。


なお、罰則が定められているのは、あくまでも安全委員会・衛生委員会の設置に対してです。構成メンバーが正しく選ばれていなかったり、毎月開催されていなかったりするなど、内容に不備があっても罰則の対象とはなりません。


ただし、不備が発覚すると労働基準監督署から是正勧告を受ける恐れもあるため、設置したうえできちんと機能させることが大切です。



安全衛生委員会の年間スケジュール・テーマ


安全委員会・衛生委員会は、毎月1回以上の開催が義務付けられています。


毎回同じ内容ではせっかくの委員会が形骸化してしまう可能性がありますので、月ごとにテーマを決め、計画的に調査審議を進めていくことがポイントです。


ただし、月ごとに次のテーマを考えていると、内容が重複したり、時間が足りず十分な調査ができなかったりする可能性もあります。


効果的な審議をするためには、年度初めに1年間のテーマをまとめて決め、計画的に活動できるようにしておくとよいでしょう。


審議する内容は、労働安全衛生規則で定められた審議事項の範囲内で自由に決めて構いません。一般的には、従業員の興味が高そうなテーマや、季節・社会問題などに合わせたテーマなどを話し合うことが多いです。


以下に具体的なテーマの例を挙げるので、スケジュールを立てる際の参考にしてください。



4月
新入社員に合わせた安全衛生の基礎知識
10月
交通安全週間にちなんだ通勤中の交通事故予防
5月
5月病対策
11月

寒さが厳しい時期に流行する感染症対策

6月

梅雨時に増える食中毒対策
12月

年末年始で多忙になる時期に備えた長時間労働対策

7月
猛暑を乗り切る熱中症対策

1月

ワークライフバランスの推進
8月
職場の適切な温湿度管理
2月
春から増える花粉症の対策
9月
健康診断の状況・結果報告
3月
4月から入社する新入社員の健康管理




安全衛生委員会のマンネリ化を防ぐには


委員会を毎年開催していると、だんだんと取り上げるテーマがなくなり、マンネリ化してしまうことも珍しくありません。これでは委員会本来の目的や機能が果たせない恐れがあるため、マンネリ化を防ぐ工夫が必要です。


たとえば、独立行政法人労働者健康安全機構が発行する「産業保健21」や、中央労働災害防止協会が発行する「労働衛生のしおり」などを活用し、関連する知識を学ぶという方法があります。豊富な知識があれば、自社の労働安全衛生に必要なテーマを見つけやすくなるでしょう。


また、地域の産業保健総合支援センターに問い合わせてみるのもおすすめです。


産業保健総合支援センターでは、人事労務担当者向けの研修会が開かれており、テーマになりそうな知識が身につきます。公的機関だけでなく、民間企業が健康経営のセミナーを開催していることもあるので、積極的に参加してみるのもよいでしょう。


さらに、テーマを決める構成メンバーを当番制にして新しい意見を取り入れたり、構成メンバー以外の従業員からテーマにしてほしい内容を募集したりするのも効果的です。



安全衛生委員会の議事は労働者に周知して職場環境の改善に役立てよう


安全委員会や衛生委員会は、コンプライアンスのために、ただ設置すればよいというわけではありません。
さまざまな審議を通して職場環境が改善すれば、労働災害の発生防止や従業員の健康増進など、企業にとってプラスの効果も期待できるのです。


その効果を最大限に発揮するためにも、委員会で審議した内容は、すべての従業員へフィードバックしておきましょう。


事業場の問題点を全員で共有することで、事業場一丸となって改善に向けて取り組めるようになります。各従業員の労働安全衛生に対する意識も高まり、職場環境の整備がスムーズに進むでしょう。


なお、審議内容の従業員への周知は労働安全衛生法で義務付けられているので、忘れずに行う必要があります。


こういった活動を通し、労使がともに当事者意識を持ちながら従業員の健康管理に取り組むことは、健康経営の実現を目指すうえでも欠かせません。


健康管理の専門家である産業医ともうまく連携しながら、安全委員会・衛生委員会を有効活用していきましょう。



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