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【長時間労働者への産業医面談とは】どこから「長時間労働」? 「産業医面談」って何をするの?

長時間におよぶ労働は、脳血管疾患や虚血性心疾患など、脳・心臓疾患の発症と強い関連性があることから、長時間労働者に対して企業は医師による面接指導を行わなければなりません。

ここでは、何時間を超えたら「長時間労働」になるのか、面接指導を行うためにどのようなことを企業は準備しておくべきか等を解説します。

目次[非表示]

  1. 1.「長時間労働」「面接指導」とは?
    1. 1.1.「長時間労働」に明確な定義はない
    2. 1.2.面接指導とは
  2. 2.長時間労働者に対して面接指導を行う目的と必要性
  3. 3.面接指導の対象者と基準
    1. 3.1.面接指導の対象者は面接を希望した従業員のみ?
  4. 4.面接指導をスムーズに実施するために企業がやるべきこと
    1. 4.1. 労働時間の状況を正確に把握 
    2. 4.2.管理職の労働時間把握も必要
    3. 4.3.社内制度の見直し・整備
  5. 5.長時間労働を解消するために取り組むこと
    1. 5.1.意識改革を行うにはトップダウンで
    2. 5.2.「過重労働対策推進計画」を策定する
  6. 6.面接指導を実施するときのポイント
    1. 6.1.会社の状況を理解した医師が面接指導を担うのが望ましい
    2. 6.2.産業医に面接を希望しやすい環境づくりが必要
    3. 6.3. 面接指導には産業医との連携が不可欠
    4. 6.4.面接実施後に行うこと(事後措置)について
  7. 7.長時間労働を改善するには
  8. 8.まとめ



「長時間労働」「面接指導」とは?

「長時間労働」と一口に言っても長時間労働とは一体何時間から長時間労働に該当するのか、まず言葉の定義について解説します。


「長時間労働」に明確な定義はない

長時間労働と脳・心疾患の発症には、強い関連性があると言われていますが、長時間労働に明確な定義はありません。しかし、脳・心臓疾患にかかわる労災認定基準においては、週40時間を超える時間外・休日労働がおおむね月45時間を超えて長くなるほど、関連性が強まるとされています。加えて、月100時間を超える時間外・休日労働時間または2~6か月平均で月80時間を超える時間外・休日労働時間が認められる場合、発症との関連性が強いと評価できるとされています。

長時間労働に明確な定義は有りませんが、時間外・休日労働時間が月45時間を超えると脳・心疾患の発症リスクが高まるということを留意してください。


面接指導とは

面接指導とは、問診やその他の方法により、心身の状況を把握し、これに応じて面接により必要な指導を行うことをいいます。

また、長時間労働により疲労が蓄積し、健康障害発症のリスクが高まった労働者について、医師が健康の状況を把握し、これに応じて本人に対する指導を行うとともに、その結果をふまえて事後措置を講じることを「長時間労働者への医師による面接指導」といいます。


長時間労働者に対して面接指導を行う目的と必要性

長時間労働者への面接指導の主な目的は、脳・心臓疾患の発症予防です。前述の通り、長時間労働と脳・心臓疾患の発症は強い関連性があるとされています。労災認定された自殺事案には、長時間労働が認められるケースも多くあります。従業員が過労死などに至った場合、人材損失のみならず、社会的信用を失墜させてしまうことに繋がります。ほかにも、労働基準監督署による労災認定・書類送検、民事訴訟などによる刑事罰や事業名の公表、新規採用難、賠償金の支払いなど、大きな損失を生じることが考えられます。


面接指導の対象者と基準

以下のケースに当てはまる従業員は、医師による面接指導が義務とされています。


  1. 月80時間超の時間外・休日労働を行い、疲労の蓄積が認められ、面接指導を申し出た者
  2. 研究開発業務従事者は、1に加えて、月100時間を超える時間外・休日労働を行った者
  3. 高度プロフェッショナル制度適用者は、1週間あたりの健康管理時間(*)が40時間を超えた場合、その超えた時間について月100時間を超えて行った者
    *健康管理時間・・・事業場内にいた時間 + 事業場外において労働した時間

出典 :厚生労働省「長時働者への医師による面接指導制度について


1は面接指導を申し出た従業員が対象になる
のに対し、2・3では、従業員からの面接指導の申し出は必要ありません。ケースに当てはまる従業員への面接指導が義務となることに留意してください。


2019年4月まで、面接指導が義務となる対象に必要な労働時間は「月100時間」、努力義務として必要な労働時間は「80時間」とされてきましたが、労働安全衛生法の改正に伴い、義務となる労働時間の基準が80時間に引き下げられました。法改正に伴い基準も変化するため注意が必要です。


面接指導の対象者は面接を希望した従業員のみ?

月に80時間を超える時間外・休日労働を行い、疲労蓄積がある従業員のうち、「面接を申し出た者(面接を希望した従業員)」には面接指導の義務が生じますが、企業は申し出のない従業員にも面接指導を実施するよう努めなくてはなりません。また、従業員には裁量労働制で働く従業員や管理監督者も含まれることに注意してください。


このほか、企業の努力義務として、事業主が自主的に定めた基準に該当する従業員、研究開発業務従事者にも、面接指導を行います。高度プロフェッショナル制度適用者の場合は、面接を申し出た方には労働時間にかかわらず面接指導を実施するようにしましょう。


面接指導をスムーズに実施するために企業がやるべきこと

従業員の時間外・休日労働時間が80時間を超えてしまった場合、企業は以下の対応を行います。


  1.  本人に、超えた時間に関する情報を通知しなければならない。
  2.  申し出があった場合、医師による面接指導を実施しなければならない。
  3.  面接指導を行った医師から必要な措置について意見聴取を行い、必要と認める場合は、適切な事後措置を実施しなければならない。
  4.  本人に関する作業環境、労働時間、深夜業の回数、時間数等の情報を産業医に提供しなければならない


これらの対応をスムーズに行うためには、「労働時間の状況を正確に把握」することと、あわせて「社内制度の見直し・整備」に取り組むことが必要です。


 労働時間の状況を正確に把握 

労働時間の状況を正確かつ客観的な方法で把握しておくことは、長時間労働を防ぐためだけでなく、残業代を正しく計算するためにも必要です。また、2019年4月の労働安全衛生法の改正により、医師が面接指導を実施する際に従業員の労働状況を正しく判断するための重要な情報として提供が義務化されました。


厚生労働省令にて定められている記録方法は、タイムカードによる記録、パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間の記録、その他の適切な方法とされています。(「労働安全衛生規則 第五52条の7の3」より)


【関連記事】担当者必見!働き方改革関連法における産業医・産業保健の変更点


管理職の労働時間把握も必要

裁量労働制で働く従業員や管理監督者も、月80時間超の時間外・休日労働を行い、疲労蓄積が認められ、面接を申し出た場合は医師による面接指導を実施する必要があります。


そのため、裁量労働制の従業員や管理監督者の労働時間も、他の従業員と同じように正確かつ客観的な方法で把握しておかなくてはいけません。


社内制度の見直し・整備

客観的な方法による労働時間の把握のために、出社・退社時間の記録方法や時間外労働の申請方法の見直し、就業状況の基準を整備する必要があります。


タイムカードによる労働時間の記録をおこなうタイムレコーダーは、タイムカードやICカードで打刻ができるものが一般的です。タイムカード形式でもPCに勤怠データを取り込むことができるものや、休憩・外出時刻も印字できるもの、勤務形態に合わせて勤怠管理ができるものなど、様々なタイムレコーダーがあります。ICカード形式のタイムレコーダーには、専用のICカードが用意されているもののほかにも、通勤等で利用しているIC定期券やマネーカードなど、Felica/MIFAREに対応したものも多く各社から用意されています。従業員数や勤務形態、導入にかかる費用などから自社にあったものを選びましょう。


長時間労働を解消するために取り組むこと

これまでのことを踏まえ、長時間労働を解消する方法について解説していきます。


意識改革を行うにはトップダウンで

長時間労働を解消するためには、経営者や管理監督者、労務担当者等が危機感を持ち、長時間労働の削減に向けた取り組みをトップ層が率先して行うことが重要です[堤7] 。

経営トップが長時間労働の解消に向けた「過労死や過重労働による健康障害を生じさせない」という方針を決め、トップダウンで従業員に周知を徹底することで、より効率的に取り組みを実行することができます。


「過重労働対策推進計画」を策定する

経営トップが決めた方針に基づいて、過重労働対策推進計画を策定します。これまでの経験や勘に頼ることなく、PDCA(Plan, Do, Check, Act)サイクルを活用して、システムとして活動を展開することが重要です。PDCAサイクルを具体的な文書にすると、手順や役割、内容、記録が明確になるので、さらに効果的です。


厚生労働省が推奨するPDCAサイクルの例は下記の通りです。

出典:厚生労働省「過重労働対策推進計画


過重労働対策の推進体制には、職場の管理監督者、衛生管理者・衛生推進者、人事労務担当者、産業医や保健師等の産業保健スタッフなどの各部門を含み、推進にあたっては、衛生管理委員会等を活用することが必要です。各部門がそれぞれ連携して対応します。推進体制を機能させることで、過重労働、長時間労働が起こりにくい状況を作り、面接指導等の実施まで推進計画がスムーズに進むようになります 。


面接指導を実施するときのポイント

ここでは、面接指導を実施する際に注意したいポイントについて解説します。


会社の状況を理解した医師が面接指導を担うのが望ましい

長時間労働者への医師による面接指導は、産業医のほか、産業医の要件を備えた医師、従業員の健康管理を行える医師が実施することが望ましいです。会社の状況を理解した医師が面接指導の役割を担えるとなお良いでしょう。


また、面接の費用は、事業者が負担すべきと考えてください。 


産業医に面接を希望しやすい環境づくりが必要

産業医がこまめに職場巡視を行うなど、従業員と産業医の直接の接触を増やすことで、従業員にとって産業医が身近な存在となり、面談や相談を比較的気楽に行えるようになります。また、一度産業医と面談したことがあると、以後体調不良等の相談をしやすくなるといった効果も期待できます 。


 面接指導には産業医との連携が不可欠

長時間労働者への面接指導を行う場合、企業は、当該従業員の健康管理に必要な情報や資料を医師に提供する必要があります。医師が確認する健康障害は脳・心臓疾患とメンタルヘルスの不調です。このため、当該従業員の正確な労働時間のほかに、血圧や血糖値など健康診断の結果を医師に伝えましょう。厚生労働省から公開されている「労働者の疲労蓄積度チェックリスト[堤12] 」の結果も併せて医師に伝えるとより詳しく把握できるため、ぜひ活用してみてください。[松本13] 


【参考】


面接実施後に行うこと(事後措置)について

長時間労働者への面接指導を実施した場合、会社は当該従業員の健康保持のため、医師から結果報告を受けるとともに必要な措置について医師の意見を聴かなければなりません。医師からの報告書や面接指導の結果の記録は、5年間保存する義務があります。

また、事業主は医師の意見に基づき、必要に応じて措置を講じなくてはなりません。たとえば、就業場所の変更や作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少などが挙げられます。


【関連記事】産業医による面接指導はどんな場合に行われる?



長時間労働を改善するには

長時間労働を改善するには、以下のような取り組みが実施されています。


1. 時間外労働の削減

  • 「朝型勤務」や「ノー残業デー」「ノー残業ウィーク」の導入
  •  時間外労働時間の可視化
  •  部下の長時間労働抑制について管理職の人事考課項目に追加

など


2. 年次有給休暇の取得促進

  • 休暇取得計画の設定やその計画がじっしされるためのフォロー。月1日以上の休暇、連続休暇など
  •  年次有給休暇の計画的付与制度の導入
  • 部下の休暇取得状況について管理職の人事評価項目に盛り込む

など


3. 労働時間などの設定の改善

  •  短時間正社員制度の導入
  • テレワーク(在宅勤務)の導入
  • フレックスタイム制の導入
  • 年次有給休暇以外の休暇制度の導入

など


具体的な取り組みを行い、職場に「長時間働くのではなく早く帰る雰囲気」「休暇を取得しやすい雰囲気」をつくることが重要です。また、さまざまな事情を持つ人が活躍できるような労働時間、労働環境の整備を行うことも、長時間労働の解消に効果的です。


まとめ

長時間労働の解消は従業員の健康改善に効果があるだけでなく、労働生産性も確実に向上します。長時間労働による睡眠不足や疲労は、従業員の集中力や判断力を鈍らせ、ミスの増加を引き起こし、自信やモチベーションを奪います。事故の発生が増え、従業員の休職や離職、自殺といったケースにも繋がりかねません。

従業員が健康でいきいきと活躍でき、企業が健全に成長するためにも、長時間労働の解消に取り組むことは不可欠なのです。

従業員の健康状態の把握や健康管理は、会社や事業、従業員のことをよく知る産業医にまかせることが望ましいでしょう。自社にあった産業医をお探しでしたら、エムスリーキャリア「産業医紹介サービス」にご相談ください。日本の医師の約9割・28万人以上が登録しているm3.comの医師会員基盤をもとに、企業に合う最適な産業医をご紹介いたします。


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