今、働き方改革で注目したいのは”働き方”に直結する社員の“食環境”【連載vol.1】

“人”という資源の重要性を認識して、テレワークの導入や残業時間の是正など、持続可能な働き方やそのための環境づくりが求められるようになりました。

その流れの中で、今改めて考えていただきたいと思うのは、社員の“働き方”に直結する、社員の“食環境”です。長時間ではなく長期間労働できる人材を確保するためにも、生産性を上げるためにも、社員一人ひとりのコンディションそのものに目を向ける必要がより高まってきたからです。


◆社員の食生活、会社が介入することではない?

そうはいっても、「会社としては健康診断をしているし、問題があれば特定保健指導も受けられるし、そもそも大人なんだから、社員一人ひとりのコンディションなんて、会社として介入する話ではない」と思われる方も少なくないかもしれません。

でも、会社をひとつのスポーツチーム、社員を所属する選手、仕事を練習や試合に置き換えて考えてみるとどうでしょうか。朝食を食べずに練習に参加する、菓子パンやカップ麺で食事をすます、練習に没頭して食事を抜く、夜遅くまで練習をし、帰ってお酒とおつまみでお腹を満たして寝る…そのような選手が多いチームは、果たして強いチームになれるでしょうか。たとえ今現在は強いチームであっても、栄養や休養をおろそかにしている選手が多いチームのピークはそう長くないはずです。



◆食生活の改善、社員が個人で取り組むのには限界も…

それに、一日の中で仕事が占める時間は、寝る時間をのぞけばそのほとんどの時間、といってもよいはず。会社では仕事だけして、あとのことは会社の外でお願いね、というわけにはいきません。
だからこそ、会社側は“どう働くか”と“どう栄養補給をするのか”をセットで考えて、まずは、休息の時間でもあるランチタイムや、通勤時間が長い社員への朝食や残業食の現状などを把握する必要があるのではないかと思います。

私はフリーランスの栄養士なので、様々な企業で講演をしたり、社員の方々の相談に乗ったりしていますが、コンディションの改善というのは、個々人では解消しきれない部分もあると感じます。なぜならば、残業続きで夜食が10時をすぎることが大半なのに、環境的にも職場の雰囲気的にも、その間に口にできるのはお菓子しか許されない、など社員が健康的な生活を送ろうとするときにネックとなるものがあるからです。最近元気がない社員や、特に疲労度が高そうな部署があれば、まずはその食環境に目を配り、課題を見える化するようにしてみてください。


◆健康管理は投資の一つ 一方で、忘れてはならないこと

一方で、ここ数年、健康経営の名のもとに、社員の健康管理は人材への投資、と考える企業も増えてきました。食環境を整えることと並行して、このように社員の健康リテラシーを上げる取り組みも重要ですよね。
外部の著名な先生に講演をお願いしたり、産業医や保健師、栄養士による健康関連のセミナーを開催しているところもあるでしょう。そのときによく聞く話として「任意にすると、本当に聞いてほしい社員は参加しない」ということがありますが、社員の参加率をあげるためには、社員側のニーズに合ったアプローチになっているか、を改めて考えてみることをおすすめします。企業にとって問題だと思うことではなく、社員が抱えている問題に寄せてみると、関心度に比例するように参加率が上がるからです。



たとえば、デスクワーク中心のエンジニア職が多く、メタボ率が非常に高い企業で「メタボにならないための食事」というテーマでセミナーを企画すると、もともと健康への感心が高い人しか参加しない、となりがちです。なぜならば「運動もできないし、食事に気をつかう時間もない」と思われやすいからです。でも、「腰痛を解消しよう」というようなテーマにかえると、働き方的に腰痛に悩んでいる社員は多いので、「それならば参加しよう」と思いやすくなります。そのセミナーの中で、腰痛を軽減するには適正体重にすることも必要で、そのためには…という話を交えると、社員が自分ごととして抵抗なく聞けるようになります。

また、研修などを依頼する際には、職場環境を共有した上で、「社員が今日からできる、と思えるようなことも交えてください」とお願いするのも良いと思います。良い話をきいた、勉強になった、でも、行動につながるようなヒントがなかった、のやりっぱなし研修になってしまってはもったいないですから。


◆人生100年時代 企業に求められる対応は

人生100年時代、働く時代は長くなります。食は短期的にも長期的にもパフォーマンスに影響を及ぼしますから、食に気を使って自身の健康を管理することはこれからの時代に欠かせないビジネススキルになるでしょう。そのとき企業は、社員が自己管理をしやすい食の環境作りを含めて働き方改革をすすめることが求められるのではないでしょうか。

すでにされている企業の取組には、良いケースはもちろん、社員の満足度をあげようと思って取り入れたものがおもいがけず社員の不健康な習慣を生み出してしまった、というケースもあります

詳しくはまた次回にご紹介しますね。


↓笠井氏の連載はこちらから
【連載vol.1】今、働き方改革で注目したいのは”働き方”に直結する社員の“食環境”
【連載vol.2】その食環境、社員の疲労度をあげていませんか?
【連載vol.3】企業における食環境改善の実例とメリット
【連載vol.4】ストレスに強くなる食事とは​​​


笠井 奈津子(かさい なつこ)


栄養士、フードアナリスト、生活リズムアドバイザー、健康リズムカウンセラー

東京都生まれ

聖心女子大学文学部哲学科卒業後に香川栄養専門学校(現 香川調理製菓専門学校)を経て栄養士に。
都内心療内科クリニック併設の研究所で食事カウンセリングに携わる。
フリーランス転身後、“メタボとうつ”“心と食”などをテーマに講演を行う。企業研修では、数百人単位の参加者でも事前に食事記録をチェックし、労働環境、食環境にも配慮。コンビニでの選択法など、机上の空論にならないアドバイスを大事にしている。

 
▼著書
『10年後も見た目が変わらない食べ方のルール』(PHP新書)『甘い物は脳に悪い』(幻冬舎)
『子どもの「できない」を「できる」にかえる子育て食事セラピー』(河出書房)

など9冊、累計発行部数20万部。



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