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産業医による面接指導はどんな場合に行われる?

労働安全衛生法は1972年に成立した法律で、労働環境を守るために制定されましたが、時代の変化とともに労働環境も変わってきています。そこで、2014年6月には働き方改革の一環として労働安全衛生法の一部が改正されて、第66条にストレスチェックに関する事項が追加されました。この記事では、長時間労働者や高ストレスと判定された従業員に対して行うべき事業者の事後措置について解説していきます。


企業の人事労務担当者なら知っておきたいストレスチェック制度とは

ストレスチェック制度とは、労働安全衛生法の一部が改正されたことによって2015年から始まった制度です。労働者のメンタルヘルス問題に各企業が真剣に取り組むことを目的に行われています。日本では少子高齢化や企業のコストカットなどによる労働者不足によって長時間労働が増えつつあり、厚生労働省も労働者のメンタルヘルスについて注視してきました。実際に精神障害による労災の請求件数は年々増加傾向にあり、2015年にはついに1500件を超えたのです。そうした状況に危機感を抱いた厚生労働省が、労働安全衛生法の一部を改正して「ストレスチェック制度」を始めたのがきっかけとなっています。


実際にストレスチェックに関する条文は労働安全衛生法第66条の10 第1項です。それによると、「事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師、保健師その他の厚生労働省令で定める者(以下この条において「医師等」という。)による心理的な負担の程度を把握するための検査を行わなければならない」とされています。たしかに、条文にこそストレスチェックという明確な文言は含まれていません。しかし、同法の具体的な指針を定めたガイドラインには、新しく創設されたしくみ全体を「ストレスチェック制度」と呼びながら説明が行われています。ストレスチェックは労働安全衛生法に基づいた、企業が従わなければいけない義務のひとつだということです。


ストレスチェックを行わなければいけない事業所とは

ストレスチェックを行わなければいけないのは、常時 50 人以上の労働者が従事する事業所です。本社以外に、支店や営業所などが複数存在する場合には、それぞれの支店や営業所ごとで判断することになります。労働者の定義については、「常態として雇用されている者」となっているので、週一勤務のパートやアルバイトであっても含まれる点には注意しましょう。仮に事業所で働く労働者の数が50人未満のケースでは、ストレスチェックを行う義務はありません。その場合、実施に関しては事業所の判断にゆだねられています。ただし、実施する場合は、ストレスチェックの法令や指針などに従わなければいけません。


ストレスチェックを行った結果、高ストレス者と判断された労働者および一定の基準に該当する長時間労働者は面接指導の対象となります。かつての基準では、面接指導の対象者は100時間という労働時間に当てはまる人でした。しかし、労働安全衛生法の改正によってそれが80時間に変更されている点には気を付けなくてはいけません。また、労働安全衛生法の改正によって、研究開発事業従事者や高度プロフェッショナル制に該当する人も面接指導の対象に含まれるようになりました。どちらも、100時間を超える労働時間となった場合には「本人の申し出の有無にかかわらず医師による面接指導が必要」となっています。違反した場合には、企業側に50万円以下の罰金が科される可能性があるので気を付けましょう。


面接指導の概要について 

面接指導の対象者は長時間労働者および、ストレスチェックによって高ストレスと判断された労働者です。具体的にどのような面接指導を行っていくのでしょうか。



対象者への面接指導の内容 

面接指導の対象者となった労働者から申し出があった場合には、企業側は1カ月以内に面接指導を受けさせなければいけません。その場合、まずは医師が問診などによって心身の健康状態をチェックします。その結果をもとに、抑うつ傾向や疲労蓄積度などを判断して労働者に必要な指導を行います。そして、企業側には医師が行った面接指導の内容、および、就労措置が通知されるというのが一般的な流れです。なお、長時間労働者と高ストレスと判断された労働者における面接指導の手順に大きな違いはありません。基本的には面談を行って、その結果をフィードバックするという流れは同じです。


面接の対象者が面接指導の拒否を申し出る場合について

結論からいうと、面接指導を拒否している労働者に無理に受けさせることはできません。面接指導の対象となる基準を超えていた場合、企業側は該当する労働者が面接指導を受けられる機会を提供するなどの面接指導を促す義務を負います。しかし、面接指導を行うのは、あくまでも労働者が合意する場合に限ります。つまり、企業側は基準を満たした労働者に対して、面接指導を受けられる機会を提供することが何よりも重要なのです。このように機会を提供し、更に勧奨すれば尚良いでしょう。面接指導を受けるかどうかは労働者本人の判断に任せることができます。しかし、本人から申し出を受けた場合は、企業側に拒否をする権利はありませんので、誤解しないようにしましょう。


面接指導を行える人 

面接指導は医師が行うことになりますが、誰でもよいわけではありません。基本的には、事業所で契約している産業医や産業保健活動に詳しい医師が行うほうがよいとされています。産業医とは、労働者の健康管理に精通した専門的な医師です。一般的には企業との間で業務委託契約を結び、職場の労働環境の改善に対して専門的な知見を活かして助言や指導を行います。労働安全衛生法によって、勤務している労働者が50人以上いる事業所には産業医を選任するように義務付けられています。つまり、ストレスチェックが義務付けられている事業所であれば、産業医が担当することが可能となりますので、人選についてはそれほど苦労することはないでしょう。


一方、産業保健活動に詳しい医師については、労働者の健康や安全を確保する活動を行っている医師が該当します。面接指導においては日ごろからお世話になっている産業医に依頼するケースも多いでしょう。しかし、面接指導をしたうえでより専門的な治療が必要になるケースもあり、そうしたときは診療内科医や精神科医といった専門家医に治療を依頼することも可能です。状況に応じて依頼する医師を変更できるということは覚えておきましょう。


面談指導


面接指導における2つの方法とは  

面接指導は、原則的に「医師との対面」で行わなければいけません。しかし、複数の事務所や営業所を抱える企業では、すべての事業所に十分な産業医を配置することは難しいでしょう。そこで、やむを得ない場合には「通信機器を使用した面接指導」も認められています。それぞれ、どのような特徴があるのでしょうか。


対面式の特徴

面接指導を行う方法として、ポピュラーなのは対面式です。その名の通り、面接指導の対象となる労働者と、指導する医師が直接会って面談します。対面式では、労働者の表情はもちろん、雰囲気などを直接感じ取れます。そのため、コミュニケーションを取りやすく、より効果的な指導を行いやすいのがメリットです。注意点としては、労働者が落ち着いて指導を受けられる場所を提供することが挙げられます。できるだけプライバシーを守れる環境を用意しましょう。対面式のデメリットとしては、面接指導を受けた結果、業務に支障をきたしてしまっては労働者のストレスがかえって増幅してしまう恐れがあります。そのようなことがないように、管理者に対してもストレスチェックに対する理解を深める研修を行うなど、職場環境も整えておくとよいでしょう。


情報機器を使用した面接指導の特徴

情報機器を使用して面接指導するメリットは、遠隔地にいても指導が受けられる点です。事業所の数が多く、原則とされている対面式での産業医による面接指導を行うことが困難な場合、情報機器の利用によって面接指導が受けやすくなる点は事業者と労働者双方にとってメリットになるでしょう。


選任されている産業医以外が情報通信機器を使用して面接指導を行う場合は、下記いずれかの場合に該当する必要があります。


  • 面接指導を実施する医師が、対象労働者が所属する事業場の産業医である場合。
  • 面接指導を実施する医師が、契約(雇用契約を含む)により、少なくとも過去1年 以上の期間にわたって、対象労働者が所属する事業場の労働者の日常的な健康管理 に関する業務を担当している場合。
  • 面接指導を実施する医師が、過去1年以内に、対象労働者が所属する事業場を巡視 したことがある場合。
  • 面接指導を実施する医師が、過去1年以内に、当該労働者に直接対面により指導等 を実施したことがある場合。


そのほかにも、面接指導で使える情報通信機器に該当するのは、映像と音声の送受信が可能な機器である点にも気を付けましょう。「音声だけ」や「映像だけ」の機器では要件を満たしたことにはなりません。しっかりとした設備を整えてから実施しましょう。


面接指導後に行う事後措置について 

面接指導が実施された場合、企業側は概ね1カ月以内に担当した医師から意見聴取を行い、医師が作成した面接指導結果報告書及び事後措置に係る意見書を元に、面接指導の内容を踏まえた事後措置の内容を考えるようにしましょう。


面接指導結果報告書は、労働者本人のメンタルヘルスの状態を評価した書類です。指導した医師の氏名や面接を実行した年月日、労働者へのアドバイスなどが記載されています。一方、事後措置に係る意見書には「労働時間の短縮」「就業場所の変更」など、より具体的な指導内容が記載されていることもあるので、注意しておきましょう。


提言を受けた企業側は、報告書をもとに社内で検討し、改善策を実行しなければいけません。その上で、面接指導が行われた結果、労働者本人に不利益が生じないよう、プライバシーには十分な配慮が求められます。なお、「面接指導結果報告書」または「就業上の措置に係る意見書」などの面接指導に関する書類は、5年間の保存義務があります。


職場の理解を得ながら改善策を実施していこう! 

面接指導は、一定の基準を満たした労働者に対して、企業側が機会を提供しなければならない義務です。その結果をもとに、職場の理解を得ながら実際に改善策を進めていくのは、企業の人事労務担当者の仕事となるケースが多いでしょう。苦労されることも多いでしょうが、面接指導が労働安全衛生法に規定されている義務であることを説明して、職場内での理解を深めていってください。



参考:
労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル
長時間労働者、高ストレス者の面接指導に関する報告書・意見書作成マニュアル
​​​​​​​情報通信機器を用いた面接指導の実施について







                                                                                                                

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