catch-img

衛生管理者による職場巡視は義務なのか?労働環境改善に役立つポイントを徹底解説

労働安全衛生法により、50名以上の労働者がいる事業場への選任が義務付けられている「衛生管理者」。従業員が健康に働けるよう、職場の労働衛生面を全般的に管理するのが衛生管理者の主な役割です。従業員の健康面に関する処置のほか、作業環境の衛生面における調査や改善、衛生教育など、その職務は多岐にわたります。


その中でも、特に重要な職務として挙げられるのが「職場巡視」です。職場における労働衛生面の問題を早期発見するためにも、定期的な職場巡視は欠かせません。今回は、衛生管理者による職場巡視の基礎知識を踏まえ、職場巡視の流れや必要な事後措置などについて解説していきます。


目次[非表示]

  1. 1.衛生管理者による職場巡視は企業の義務!実施の目的や内容は?
  2. 2.衛生管理者による職場巡視の流れ
    1. 2.1.職場巡視の事前準備
    2. 2.2.職場巡視の実施
    3. 2.3.職場巡視の事後措置
  3. 3.職場巡視の事後措置として大切なこと
  4. 4.職場巡視で把握した内容を改善するため、現場への適切なフィードバックを


衛生管理者による職場巡視は企業の義務!実施の目的や内容は?


職場巡視とは、従業員が働く作業現場を実際にその目で見て回り、安全衛生上の問題がないかどうかをチェックする作業のことです。問題が見つかった場合は、内容に応じて必要な改善措置を講じます。チェックする項目は企業ごとに異なりますが、たとえば以下のようなものが挙げられます。


  • 室内の照明、換気、気温、湿度が適切か
  • トイレ及び洗面所が清潔か
  • 職場が清掃されているか
  • 地震、防災対策が適切に講じられているか
  • 長時間労働対策が講じられているか
  • 安全衛生の保護具の保管が適切か


衛生管理者自らが巡視することで、より正確な状況把握が可能となり、健康管理を積極的かつ的確に行えるようになります。現場で発生しているストレスの要因などを発見するためにも、非常に重要な職務だと言えるでしょう。


なお、衛生管理者による職場巡視は労働安全衛生規則により実施が義務付けられており、衛生管理者は1週間に1回以上、巡視を行わなければなりません。


また、職場巡視は、衛生管理者と同じく従業員の健康管理を担う「産業医」に対しても実施が義務付けられています。職場巡視の目的や内容は共通していますが、巡視を行う頻度は同じではありません。衛生管理者が1週間に1回以上の職場巡視を義務付けられているのに対し、産業医は原則1カ月に1回以上とされています。



担当者
頻度
衛生管理者
週1回以上
産業医
原則は1カ月に1回以上(条件付きで2ヶ月に1回)
安全管理者
頻度に関する規定はなし
(建設業関係)統括安全衛生責任者
毎作業日1回以上
(建設業関係)店社安全衛生管理者
月1回以上を義務付け


ただし、2017年の労働衛生規則改正により、一定の条件を満たせば産業医による職場巡視は2カ月に1回以上でも可と認められました。産業医には、近年問題視されつつある過重労働・メンタルヘルスの対策強化に時間を割いてもらいたいというのが、改正の理由のひとつです。


産業医の職場巡視が減った分、衛生管理者が行う巡視の重要性は高まりました。頻繁に職場巡視を行うことで得た新鮮な情報は、産業医が指導や助言をする際に大いに役立ちます。効果的な健康管理を行うためにも、産業医と密に連携し、職場巡視の実施や結果報告を行うことが大切です。


【関連記事】

健康経営に欠かせない衛生管理者とは?選任義務と必要な資格について解説


衛生管理者による職場巡視の流れ

衛生管理者による職場巡視を実施する場合、「事前準備」「実施」「事後措置」というステップを踏むのが一般的です。それぞれどのように進めていくのか、詳しく見ていきましょう。


職場巡視の事前準備

前述の通り、50名以上の労働者がいる事業場では、衛生管理者による職場巡視を1週間に1回以上実施する義務があります。産業医と比べれば頻度が多いとはいえ、限られた機会で効率良く巡視するためには、事前準備が欠かせません。重点的にチェックする項目のリストを作成する、巡視対象となる現場の情報を集めておくなど、スムーズに進めるために必要なことを考えましょう。


職場巡視の最中も、従業員は日常の業務を行っているため、邪魔をしないことも大切です。優先度の高い場所から巡視が行えるようにマップを作成する、繁忙期や締め切り前を避けるなど、スムーズに実施出来るようタイミングにも配慮しましょう。


職場巡視の実施

 実際に職場巡視に回る際、ただ漫然と現場を眺めるだけではいけません。従業員の健康障害につながるリスクを早期発見するために、厳しい目でチェックすることが大切です。具体的には、以下のようなポイントを心がけると良いでしょう。


 ① 「この現場ならどのような労働災害が起り得るか」をイメージする

 ②従業員の服装の汚れなどから、普段どのように業務を行っているかを想像する

 ③ 発生した現象の背景を考える

 ④ 悪い部分だけでなく誉めるべき部分も見つけ、従業員との関係を良好に保つ

 ⑤ 巡視中に転倒などのトラブルが起きては本末転倒なので、安全には十分配慮する

 ⑥ 事務所や休憩室、トイレ、喫煙室などの作業以外で使うスペースもチェックする


この中で、特に注意したいのが①です。労働災害が起きると、従業員の心身に深刻な障害が及ぶ恐れがあります。損害賠償金の支払いや社会的信用の失墜など、企業も深刻なダメージを受ける可能性もあるでしょう。このような事態を避けるためにも、職場巡視で労働災害発生の可能性をイメージし、必要な措置を講じることが大切なのです。


たとえば、パソコンやレジスターなど、卓上で電子機器を使う現場の場合、機器から伸びるコードには注意しなければなりません。コードが無造作に垂らされたり、床を這ってコンセントにつながっていたりすると、足を引っかけて転倒してしまうかもしれません。コードをまとめて机や床に固定するなど、足を引っかけにくくする工夫が必要です。


また、消毒や清掃作業で薬品を使用する現場の場合、正しく取り扱わないと深刻な健康被害が発生する恐れがあります。過去には、本来500倍に希釈して使用するべき薬品を原液のまま使用し、中毒を起こした労働災害の事例もあります。職場の目立つところに正しい使用方法を掲示する、業務のリスクを従業員に周知徹底させるなどの対策が欠かせません。


職場巡視を行うに当たり、参考になるホームページとして、厚生労働省の「職場のあんぜんサイト」があります。こちらでは過去に発生した労働災害について「業種」や「事故の型」、またなぜその労働災害が発生したのか?という「起因物」などから調べることが出来ます。

 巡視する事業場の環境に合わせて、発生の可能性がありそうな労働災害を調べて、参考にすると良いでしょう。


職場巡視の事後措置

職場巡視が終わったら、巡視を行ったメンバーで内容をまとめる会議などを行いましょう。チェックリストの結果や、巡視した際に気になったポイントなどをお互いに確認し、解決すべき問題があれば現場に指摘します。内容がまとまったら、チェック結果の記録作成やリスク評価などを行い、関係各所への報告を行いましょう。


また、間違いなく職場巡視を行ったことを証明するためにも、記録は必ず作成し、一定期間保管しておきましょう。なお、職場巡視と同様に企業の産業衛生に関わる、衛生委員会の議事録や健康診断結果については、法律で保管が義務付けられています。それぞれ3年、5年の保管が必要なので、職場巡視の記録もそれに準じた保管期間を設けると良いでしょう。 


職場巡視の事後措置として大切なこと

どれほど丁寧に職場巡視をしても、チェックしただけでは意味がありません。職場巡視でわかったことは必ず記録として残し、リスク評価も行いましょう。リスク評価では、職場巡視で見つかった問題について、労働災害につながる可能性や影響の大きさなどを考え、どのリスクから優先的に対応するべきかを判断します。


問題が多く見つかった現場の場合、どれから取りかかれば良いか判断に迷っているうちに、労働災害が発生してしまう可能性があります。これでは、せっかくの職場巡視が無駄になりかねません。このような事態を防ぐためにも、リスク評価は非常に重要な役割を果たすのです。


リスク評価を行うことで、すぐに改善措置が必要な問題がわかりやすくなり、重大な労働災害の発生を防げる可能性が高まるでしょう。



職場巡視で把握した内容を改善するため、現場への適切なフィードバックを

職場巡視で見つかった問題は、衛生管理者と産業医で把握するだけでは不十分です。実際にそこで働く従業員にフィードバックすることで、危険予知にもつながり、効果的な改善措置が可能になります。


ただ、単純にフィードバックするだけでは、うまく改善につながるとは限りません。特に、規模の小さい事業場の場合、労働衛生の担当者がいないことも多く、フィードバックや改善指摘が放置されてしまうケースも考えられます。うまくフィードバックが活かされていないと感じた場合は、外部の専門家へ相談してみるのも選択肢のひとつです。


各地域に設置されている産業保健総合支援センターには、職場巡視をはじめとした産業保健に関するプロが在籍しています。自社の現状や効果的な改善策などについて相談することで、プロの適切なアドバイスにより、打開策が見つかる可能性もあるでしょう。


また、改善をすべて現場任せにするのではなく、企業全体の問題として取り組む姿勢を持つことも大切です。安全衛生委員会で議題として取り上げることにより、より効果的な改善策をとれる可能性もあります。現場の意見も聞いたうえで検討することで、衛生管理者や産業医の意見を押し付けてしまう心配もなくなります。


職場巡視で把握した内容の改善は、従業員の健康を守るために必要不可欠なことです。関係各所とうまく連携し、労働災害や健康障害の発生を防いでいきましょう。


【あわせて読みたい】

産業医に関するお悩みありませんか?

エムスリーキャリアの産業医紹介サービスでは全国の医師の約9割・28万人以上が登録しているm3.comの医師会員基盤をもとに企業ニーズにマッチしたベストな産業医を紹介することが可能です。

 

全国各地の医師が登録しているため、幅広い地域の事業場に対応が可能です。
また、企業からのニーズが高い精神科に精通した産業医が多い点も特長です。

 

産業医選任後も企業の産業保健に関する継続的なサポートや窓口として産業医との業務調整などにも対応しています。

 

自社の状況に合わせて適した紹介ルートを選び、どのような産業医を選任したいのか是非お気軽にお問い合わせください。

産業医に関するお悩みありませんか?

人気記事

1

社員の健康診断は義務?企業が理解しておきたいポイントとは

健康診断は、労働者を雇っている会社が定期的に行わなければなりません。その実施は義務といわれていますが、会社を立ち上げた人などの中には、実際に対象となる労働者や健康診断の項目など、その詳細は知らない人も多いのではないでしょうか。この記事では、健康診断の概要に加えて、企業が理解しておきたいポイントについて紹介していきます。

2

2020年度から義務付けられる受動喫煙防止対策。企業の法的責任とは?

2020年4月1日より施行される健康増進法の改正によって、従業員の望まない受動喫煙を防止することが企業責任のひとつに加わりました。法律改正によって、人事労務担当者は受動喫煙防止や社内のたばこ問題解決に向け、より一層の対策が求められることになります。 本記事では受動喫煙対策関連の法案が設立された背景をはじめ、企業としての法的責任や対策についてご紹介します。厚生労働省が紹介する各種支援制度、他社事例等もご説明しますので、受動喫煙問題を検討する担当者にとってはどれも見逃せない内容ばかりです。

3

嘱託産業医への報酬はどれくらい?相場や決まりなど。

「産業医の採用コストっていくらが適正なの?」と不安に思う方は多いのではないでしょうか。 すでに産業医がいる企業でも、雇用形態を変えることでコストを抑えることもできるかもしれません。 本記事では、産業医の報酬相場や決まりなどをご紹介します。

4

病気?わがまま?若い世代に多いといわれる新型うつの特徴と対処法

従来のうつ病とは異なるとされる新型うつが、現代人、特に若い世代に増えているといわれています。新型うつについて、より詳しい内容を知っていないと、その対処に困惑してしまうケースも多いです。この記事では、新型うつとはどのようなものなのか、さらに、会社ではどのように対処していくべきなのかなどを説明していきます。

5

健康診断の再検査問題!会社は従業員にどのように対応すべきか?

一般的にはさまざまな企業において、年に一回など、定期的な健康診断が行われています。しかし、場合によっては再検査が必要な従業員も出てきます。この場合、企業はどのような対応をとればよいのでしょうか。この記事では、再検査が必要な従業員に対して会社側がとるべき対応や、健康診断を実施するうえでどのような点に注意すればよいかを解説していきます。

関連記事

衛生委員会を正しく開催する方法

法律・制度

「衛生委員会を設置する」って実際に何をしたらいいの?と疑問をもつ方も多くいらっしゃるかと思います。初めて衛生委員会を設置する企業様、開催はしているものの運営に疑問を持っている企業様に向け、正しく衛生委員会を開催する方法をご紹介いたします。

産業医の選任とあわせて企業に実施義務がある4つの報告について解説

法律・制度

産業医を選任するにあたり、企業サイドにおいて行うべきことは数多くあります。そもそも、報告書の提出について詳しく知りたいという企業経営者や人事労務担当者、または、顧問企業をもつ社労士も多いのではないでしょうか。この記事では、産業医選任報告の提出方法や、そのほかにも企業が実施しなければいけない取り組みや報告について解説していきます。

健康経営に欠かせない衛生管理者とは?選任義務と必要な資格について解説

法律・制度

従業員の健康に配慮した健康経営をするうえで、衛生管理者は必要不可欠です。特に、条件を満たす事業所であれば、衛生管理者を配置することが義務付けられています。しかし、そもそも衛生管理者とはどのような役割で、配置することでどのような効果があるのか理解しているでしょうか。ここでは、衛生管理者を配置する際に最低限覚えておきたいポイントについて詳しく紹介します。

職場巡視~実施するだけになっていませんか? 改善までつなげるポイントとは

ウェルビーイング

月1回の実施が定められている職場巡視。 従業員の健康を維持する上でとても重要な業務です。 今回は、衛生管理者と産業医がどのような点に注意して職場巡視を行えばいいのか、それぞれの役割や巡視のポイントについて解説します。

ストレスチェックは義務?高ストレス者に行う面接指導について解説!

法律・制度

ストレスチェックは、2015年にスタートした、健康を促進するための制度の一つです。ストレスチェックを用いた結果、高ストレス者と選定された従業員から面接指導の申し出があったときは、医師による面接指導が必要となります。この記事では、高ストレス者の面接指導を行うために、知っておくべきことや注意点について解説していきます。

お問い合わせ

産業医の採用ついて、健康経営の取り組みについて、お困りではありませんか?
お見積り、ご相談は完全無料ですので、お気軽にお問い合わせください