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衛生委員会では何について話し合う?-最近の動向

労働安全衛生法により、毎月1回以上の開催が義務付けられている「衛生委員会」。従業員の健康被害や労働災害を防ぐためにも重要な存在ですが、テーマ選びに苦労したり、話し合いが形骸化したりしているケースもあるのではないでしょうか。

今回は、衛生委員会をより有意義な話し合いにするべく、テーマの動向や選び方をはじめ、おすすめのテーマや年間スケジュールなどについて紹介していきます。


1.衛生委員会とは?設置の目的と構成員 

衛生委員会とは、従業員の健康や安全を守るために必要な対策について、労使が一体となって調査審議し、事業者に対し意見を述べるための会のことです。企業で働く従業員は、労働環境や業務内容などにより、健康被害や労働災害などに直面するケースも珍しくありません。この結果、従業員が休職・退職して労働力が低下したり、賠償などでコストが増えたりすれば、企業は大きな損害を負う可能性もあります。


このような事態を防ぐためにも、衛生委員会を設置し、労使が同じ意識のもとで従業員の健康や安全に配慮した対策に取り組む必要があるのです。なお、衛生委員会の設置は、労働安全衛生法により義務付けられています。常時雇用する従業員の数が50人以上の事業所は、毎月1回以上の衛生委員会を開催しなければなりません。また、議事録は3年間の保存が義務付けられています。


参考:安全衛生委員会を設置しましょう


2.衛生委員会で話し合う内容

厚生労働省によると、衛生委員会で話し合うべき内容として、以下の通り挙げられています。

  • 労働者の健康障害を防止するための基本となるべき対策に関すること
  • 労働者の健康の保持増進を図るための基本となるべき対策に関すること
  • 労働災害の原因及び再発防止対策で、衛生に関すること
  • 前三号に掲げるもののほか、労働者の健康障害の防止及び健康の保持増進に関する重要事

たとえば、長時間労働者の現状把握と対策協議、健康診断の受診状況確認や再検査が必要な従業員への対応、労働災害発生の報告など、さまざまな内容が考えられます。ただし、すべてを1回の衛生委員会で話し合うのは難しいので、その月ごとに話し合うテーマを決めて集中的に審議するのが一般的です。とはいえ、衛生委員会が開かれるのは毎月のことなので、回を重ねるごとにテーマが尽きてしまい、内容がマンネリ化してしまうことも少なくありません。これでは衛生委員会が形骸化してしまう恐れもあるため、テーマ選びはしっかり行う必要があります。


なお、衛生委員会のメンバーは事業者が指名することになりますが、その要件についても以下の通り定められています。

・総括安全衛生管理者またはそれ以外の者で、当該事業場において事業の実施を統括管理するもの若しくはこれに準ずる者 1名(議長)

  • 衛生管理者 1名以上
  • 産業医 1名以上
  • 当該事業場の労働者で衛生に関し経験を有する者 1名以上


議長以外のメンバーの半数については、過半数労働組合の推薦によって指名しなければなりません。労働組合がない場合は、労働者の過半数代表の推薦が必要です。



衛生委員会


3.衛生委員会で話し合うテーマの動向

労働安全衛生法に定められた審議内容に沿っていれば、衛生委員会で実際に何を話し合うかは企業の自由となっています。季節ごとに従業員がかかりやすい疾病の予防対策を審議する、繁忙期には長時間労働の防止策を検討するなど、月ごとの特徴に合うテーマを選んでいる企業も多いようです。


また、最近のテーマ選びの動向としては、労働安全衛生法の改正の影響も考えられます。法改正では、2019年4月より、産業医の権限強化や時間外労働の上限規制などが実施されました。これにより、従業員が心身の健康を損ないやすい長時間労働を防いだり、健康リスクが高い従業員に対して産業医が効果的にサポートできるようになったりしています。労使、産業医ともに関係する改正であり、詳しい内容の周知徹底や対策協議なども必要なので、最近の衛生委員会でも積極的に話し合われているでしょう。


参考:改正労働安全衛生法のポイント


4.衛生委員会で話し合うテーマの選び方

従業員の安全や健康を守るという目的は理解しているものの、具体的にどのようなテーマで話し合えば良いのかわからないという人も多いでしょう。次は、テーマの選び方について、検討方法やおすすめのテーマなども含めて紹介します。


4-1.おすすめの検討方法

衛生委員会では、従業員の健康障害を防いだり、健康を増進したりするための対策をテーマに掲げて審議するよう定められています。テーマを検討する場合、まずは衛生委員会のメンバーが、労働安全衛生についてある程度知識を持っておく必要があります。独立行政法人労働者健康安全機構が発行する「産業保健21」や、中央労働災害防止協会が発行する「労働衛生のしおり」など、信頼度の高いテキストを活用して勉強しておきましょう。


また、地域の産業保健総合支援センターが開催する人事労務担当者向けの研修会や、民間企業が開く健康経営のセミナーに参加するのも効果的です。テキストや研修会などで知識を深めれば、自社の労働安全衛生のためにどのような話し合いが必要か把握でき、テーマも見つけやすくなるでしょう。


このほか、テーマを検討するメンバーを当番制にするのもおすすめです。メンバーが等しくテーマの候補を考えることで、それぞれが衛生委員会の構成員として自覚を持ち、情報収集も積極的に行うようになると期待できます。さらに、衛生委員会で話し合った内容を企業内の各部署に連絡し、全社的に共有するのも効果的です。審議内容を知ることで、個々の従業員も労働安全衛生に対する意識が高まり、「こうしてほしい」「こんな問題がある」とさまざまな意見が集まる可能性もあります。現場の生の声は、衛生委員会のテーマとしても最適なものになるでしょう。


参考:情報誌「産業保健21」

安全衛生関係リーフレット等一覧


4-2.具体的な選び方

具体的なテーマの選び方としては、まず企業内で起きている問題点を洗い出すという方法が挙げられます。たとえば、特定の部署だけ労働時間の長い従業員が多かったり、労働災害の発生が増えた時期があったりした場合、それをテーマに選んでみましょう。従業員の労働環境を改善するためには、問題の原因・対策を話し合う必要があるので、テーマとして最適です。問題を洗い出すには、現場で働く従業員から聞き取りを行ったり、退勤時間を調べたりするなど、情報収集が必要になるので各部署と連携して取り組みましょう。


特に目立った問題点がない場合は、審議しやすい定番のテーマから選ぶのもおすすめです。毎年行われる健康診断や、メンタルヘルス不調の早期発見が期待できるストレスチェック制度、長時間労働など、従業員の健康に関するものを話し合うと良いでしょう。このほか、社会問題やニュースなどで話題になっている時事ネタなど、社外のことにも目を向けると、テーマの幅を広げることに繋がります。


4-3.おすすめのテーマ例3選

どうしてもテーマが選べないという人のために、おすすめのテーマを具体的に3つ紹介しましょう。1つ目は、健康に直結する疾病をテーマとしたものです。深刻な病を引き起こすこともある生活習慣病や、季節ごとに患者が増える食中毒やインフルエンザなど、従業員に関係が深そうなものを選びましょう。予防対策や症状の早期発見に役立つ知識を話し合うだけでなく、内容を従業員へフィードバックすることも大切です。


2つ目は、現代人に増えつつあるメンタルヘルス不調に関するテーマです。2018年に厚生労働省が行った労働安全衛生調査では、仕事において強いストレスを感じている労働者の割合は58.0%という結果になりました。ストレスの内容としては、仕事の質や量、仕事の失敗や責任の発生、セクハラやパワハラを含む対人関係などの問題が多くを占めています。ストレスがたまれば休職や退職にいたるケースもあるため、ストレスを感じやすい内容に合わせた予防対策の話し合いは必要不可欠といえるでしょう。


具体的には、セルフケアの方法やラインケアの基礎知識を学んで理解を深めたりするのがおすすめです。ストレスチェックを実施していれば、その結果を分析するのも良いでしょう。


3つ目は、従業員の心身に多大なダメージを与えることもある労働災害に関するテーマです。どのようなケースが労働災害に該当するのか、業務災害・通勤災害にわけて具体的な例を解説したり、受けられる補償について周知したりします。職場巡視の実施や過重労働に対する面談など、労働災害を防ぐための対策についても話し合うことが大切です。


ここで挙げた3例以外にも、ハラスメントや禁煙に関すること、労働基準監督署の臨場が入ったときにチェックされやすい事項など、おすすめのテーマはいくつもあります。また、LGBTや外国人従業員のような数的マイノリティへの配慮も社会的に話題になっているので、テーマに選んでみてはいかがでしょうか。


参考:衛生委員会で調査・審議することが多いテーマ


4-4.年間スケジュールを作成してバランスをチェック 

衛生委員会のテーマは、衛生委員会の開催のたびに考えるのではなく、年間スケジュールを作成しておくのが一般的です。あらかじめ1年間のテーマを決めておけば、テーマの重複やマンネリ化を防いだり、時間をかけて資料や情報を集めたりできます。


たとえば、異動や新入社員の入社がある春は、衛生委員会の役割や労働安全衛生に関する基本知識について話し合うことが多いです。環境が変わってしばらく経つ時期には、メンタルヘルスのケアに関するテーマなどが良いでしょう。夏は年々厳しくなる暑さ対策について、秋は交通安全週間にともない通勤災害や交通事故などの予防に関するテーマがおすすめです。


冬は感染症が増えるので予防対策を重点的に話し合い、多忙になりやすい年末年始は過重労働対策の検討などが考えられます。このように、それぞれの月ごとに最適なテーマを考え、自社に合っているかどうかも考えながら年間スケジュールを作成していきましょう。



5.活動の参考に!他社の安全衛生活動の取り組み事例

労働安全衛生を充実させるには、従業員間のコミュニケーションが欠かせません。とある輸送用機械器具製造会社では、お互いにうまくコミュニケーションをとれるよう、「話し方マニュアル」を作成しています。また、管理職などには毎週月曜日の午前中や、午後の作業開始から1時間は会議を禁止し、作業者とコミュニケーションを取って安全に専念する時間を設けました。


また、別の食品製造会社では、多発する労働災害を改善するために、工場長が率先して労働安全衛生の改革に乗り出しています。社外の危険予知訓練研修に従業員を派遣したり、従業員全員を対象に研修を行ったりしました。朝礼やミーティングの徹底による意識向上、従業員参加型の改善活動などを含め、幅広い面で積極的な取り組みを行っています。


6.まとめ

衛生委員会は、従業員の健康や安全を守るための対策について議論する大切な場です。どのテーマを選べば良いかわからない場合は、今回紹介した内容を参考にしたり、産業医と連携して話し合うべきポイントをアドバイスしてもらったりするのがおすすめです。法律で開催が義務付けられているからと形式的に済ませるのではなく、社内の問題点を調査するなどして、有意義な話し合いを行いましょう。


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