産業医の選任とあわせて企業に実施義務がある4つの報告について解説

産業医を選任するにあたり、企業サイドにおいて行うべきことは数多くあります。そもそも、報告書の提出について詳しく知りたいという企業経営者や人事労務担当者、または、顧問企業をもつ社労士も多いのではないでしょうか。この記事では、産業医選任報告の提出方法や、そのほかにも企業が実施しなければいけない取り組みや報告について解説していきます。

 産業医の選任義務とは?

そもそも産業医とは、主に労働者の健康保持のために職場環境の管理を行い、専門的な立場から指導や助言を行う役割を担う医師のことを指します。その専門性を確保するために、産業医になるには厚生労働省が定めたいずれかの要件を満たしている必要があります。たとえば、日本医師会の研修を履修していたり、産業医科大学の産業医学基本講座を受講していることが必須条件です。

また、労働安全衛生法により、従業員が50人以上の事業場では、産業医の選任が義務付けられています。さらに、業種によって条件が異なりますが、従業員が500人または1000人以上の事業場では、専属の産業医を選任する義務があります。3000人以上従業員がいる場合は、2名以上の専属産業医が必要です。

これらの背景には、雇用形態の変化や、働き方に対する社会全体の考え方の変化があります。ワークライフバランスが求められる中で、労働者の働き方もまさに多種多様となっています。そのような動きの中では、労働者が抱える負担は肉体的なもののみに限りません。人間関係からのストレス、労働時間に対するストレスなど、その対象はさまざまです。企業の従業員が長く健康的に勤めていくには、専門知識を持った産業医が求められています。

産業医の選任をしないと罰則がある

産業医の選任は、労働安全衛生法の定めによる義務です。ゆえに、その義務を守らない企業は罰金を支払わなければなりません。産業医がいないことによるリスクはさまざまなことが考えられます。第一に、産業医が不在の場合には、従業員の職場での病気やケガにつながる恐れがあることは当然挙げられるものです。産業医は原則月に一回、事業場に問題がないか巡回してチェック(職場巡視)をします。産業医が不在の場合、その事業場はチェック機会を得られず、健康リスクが増してしまうのは明白です。

また、産業医がいないことがわかれば、体制が整っていない企業であるという悪評がつけられたり、最悪の場合、従業員からの訴訟につながったりするリスクも挙げられます。もちろん、産業医のスキルにはそれぞれ幅があることは間違いありません。しかし、産業医がいることで、防ぐことができたり、軽減できたりする事件や事故があります。産業医は従業員の健康を維持するための重大な要素であるということを理解したうえで、義務を確実に守る体制づくりが大切です。


企業の実施義務がある4つの報告とは?

企業はその従業員の数などによって、産業医の選任義務があります。さらに、ほかにも必ず実施する必要があるのが、4つの報告と取り組みです。ここではその4つの報告と取り組みについて紹介していきます。

実施義務1:産業医の選任報告

産業医の選任をしたら、まず、産業医選任報告手続きをする必要があります。産業医選任をしたという報告書を、所轄の労働基準監督署に提出しなければなりません。手続き方法はいくつかのステップを踏まえて完了となります。産業医選任報告で提出する書類は、統括安全衛生管理者・安全管理者・衛生管理者の選任報告を使用します。書類の入手方法は2つあり、1つ目は、労働基準監督署で直接取り寄せる方法です。立ち寄ることが難しいときは、厚生労働省のサイトからダウンロードすることもできます。書類を手に入れたら、選任された人の情報などを記入し、医師免許の写しや産業医の資格を証明する書面と一緒に書類を提出して、手続きを完了します。

また、電子政府の総合窓口である「e-Gov(イーガブ)」から、電子申請で手続きを行うことも可能です。手続きは、産業医が必要になってから、14日以内に完了させなければなりません。報告が完了しないと、罰則が発生したり、おもわぬ評価が下されてしまったりする可能性も考えられます。そのため、選任は計画的に行うことが大切です。

実施すること2:定期健康診断と結果報告

そもそも定期健康診断自体は、すべての企業が行う必要があります。そのうえで、事業場の従業員が50人になったら、健康診断の結果報告の義務が生じます。企業は診断結果を産業医にチェックしてもらい押印してもらったうえで、健康診断結果報告書を所轄の労働基準監督署に提出する必要があります。また、健康診断の結果に何かしらの所見がみられた社員については、産業医が就業制限や休職が必要かどうかの判断もしなければなりません。

そのほか、産業医は従業員が復職したり、休職したりする際、面談による判定を行う場合があります。そのため、産業医と従業員との関係構築がスムーズにできるような、風通しのよい企業の雰囲気作りは常に意識しておくべきといえるでしょう。

実施すること3:ストレスチェックと結果報告

ストレスチェックとは、簡単にいってしまえば、従業員の心理的な負担の程度を把握し、不調を未然に防ぐための検査のことです。従業員数が50人以上の事業場においては、年に1回のストレスチェックを実施しなくてはなりません。月の指定はありませんが、1年以内ごとのサイクルで行う必要があります。その対象者は契約期間が1年以上、または週の労働時間が通常の労働者の4分の3以上を満たしている社員のほか、パートやアルバイトも当然含まれます。厚生労働省によると、使用者はその対象に含まれていないので、社長や役員はストレスチェックを受けることは義務ではありません。

ストレスチェックの実施は、計画から結果のチェックまでをストレスチェック実施者が中心となって行います。結果は健康診断と同じく、所轄の労働基準監督署へ報告書を提出する必要があります。高ストレス者と判定された従業員からの申し出があった際には、高ストレス者面接指導を行い、就業制限・配慮等の就業上の措置を記載した意見書を作成。その他セルフケアの方法をすすめたり、場合によっては専門医を紹介したりするなどの対応が必要です。

また、労働基準監督署へ報告を行わないと、最大で50万円の罰金支払い義務が発生します。さらに、労働契約法に定められている安全配慮義務違反になってしまう可能性があることも否めません。十分注意したうえで、必ず報告するよう心掛けましょう。

実施すること4:衛生委員会の設置と衛生管理者の選任報告

衛生委員会とは、労災防止に努め、従業員の健康と安全を維持するために設置されるものです。従業員が50人以上の事業場では、衛生委員会を設置する義務があります。産業医は衛生委員会の構成メンバーとして、必ず選出しなければなりませんが、さらに衛生に係わる技術的な事項の管理を主な仕事とする衛生管理者も構成メンバーとする必要があります。そのため、50人以上の従業員がいる企業は、産業医のほかに衛生管理者も選任しなければなりません。選任義務が発生しているにも関わらず、それを選任しなかった場合、50万円以下の罰金が発生してしまいます。

衛生管理者として選任する人は、労働安全衛生法で定められた国家資格を有していることが必須条件です。また、産業医同様、労働基準監督署へ必ず選任報告書を提出する必要があります。選任から報告書提出までの期日もまた同じく、14日以内という定めがあるので留意しておきましょう。

産業医を選任するなら「エムスリーキャリア」

質の高い産業医を選任することは、企業にとってもさまざまなメリットが考えられます。もちろん従業員の健康や安全が守られるほか、企業としての信頼を勝ち取ることにつながるといっても過言ではありません。それ以外にも、働き方も多様化し、産業医の役割も細分化される中で、企業にとって産業医が頼りになるシーンは多いといえます。その分、より高度な知識や技能を持つ産業医を選任できるかどうかが、企業の成長にも関わります。質の高い産業医を選任するのに、外部の力を頼るのであれば、産業医紹介サービス「エムスリーキャリア」がおすすめです。

エムスリーキャリアは、登録者数28万人以上という業界最大級の医師基盤をもっています。多様な専門性や年齢の医師、メンタルヘルスの領域に強い産業医も多数登録しているのが特徴の一つです。また、経験豊かなコンサルタントが、企業の状況や規模などにあわせて最適な産業医を紹介してくれます。そのため、自社の課題解決に向けても、産業医を選任することが可能です。産業医顧問サービスなら月額3万円から顧問契約で産業医のサポートを受けられます。スポットサービスもあり、必要なときだけ業務を依頼できるのも、強みの一つといえるでしょう。

報告義務を守り産業医とともに従業員の健康維持に努めよう

従業員の健康維持に努めるためには、産業医の選任がすべてではありません。企業には、必ず報告や実施しなければいけないことがさまざまあります。報告義務を正しく守ったうえで、企業にとって、より自社にあった産業医と出会うことが大切です。エムスリーキャリアのサービスを利用すれば、質の高い産業医を獲得できる可能性は大幅に上がるといえます。エムスリーキャリアで、自社にもっとも見合う産業医を見つけましょう。

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